追悼 安野光雅さん

 空想の楽しさや遊び心満点の絵本、世界各地を旅して描かれた詩情あふれる風景画、古典文学の絵本化、ユーモアのセンスあるエッセイ、挿絵、表紙画、本の装丁、ポスター、・・・などなど、その業績は国内のみならず海外でも評価が高い素晴らしい画家、安野光雅さんの訃報が飛び込んできました。

 カウンターでは、半藤一利さんの追悼コーナー、出入口近くのテーブルで安野光雅さんの追悼コーナーを展開しています。今月は二人も惜しい人物を見送りました。

 安野光雅さんの絵本を知らない人はいないでしょう。皆さんのこれまでの人生のどこかできっと出会っているはずです。幼児から大人まで年齢を問わず楽しめる絵本の数々。久しぶりに手に取ってみませんか?

 本校の図書館には、残念ながら安野光雅さんの作品すべてが揃っているわけではありませんが、表紙・挿絵に携わった本も含め55冊を所蔵しています。全部おすすめですが、その中でも特におすすめの本を紹介します。

『旅の風景』[723ア] 山川出版社,2020年
 津和野町立安野光雅美術館の開館20周年を記念して、昨年出版された本。「旅する画家」とも呼ばれる安野光雅さんが世界各地を旅して描いた風景が、簡潔な文章とともに紹介されています。描きおろし40作品を含む全80作品は、見ごたえがあります。海外だけではなく、最後の方には日本の各地、そして故郷・津和野の風景も出てきます。新型コロナが収束し、また旅行ができるようになったら、津和野を訪ねてみたいです。

『繪本 歌を訪ねて』[723ア] 講談社,2016年
 描きおろしの絵とエッセイで綴られる、心の歌38曲。皆さんが知らない歌も多いのかなぁと思いますが、おうちのかたに歌ってもらったり、ユーチューブで聞いてみたりして、この絵本を味わってもらいたいと思います。たとえば、「蛍の光」「大きな栗の木の下で」「浜辺の歌」「雪山賛歌」「茶摘」「どじょっこふなっこ」「トロイカ」「ステンカ・ラージン」・・・。知ってる?

『本が好き』[019ア] 山川出版社,2017年
 これまで読んできた中から、おすすめの本を紹介。もちろん挿絵も豊富。子どもの頃から本が好きだったという安野光雅さんの読書の幅広さや、深い知識、様々な著名人との交流などが、さらりとした語り口で綴られています。
 次の引用は、「あとがき」からですが・・・
「なぜ私が本が好きで、人に薦めるかというと、自分の面白かった世界をみんなに知ってもらいたいだけなのだ。そうはいっても、なかなか読んでもらえない。この頃は本を読む人が少なくなったという。どうもそれは本当らしい。」
「今日、喫茶店で珍しく本を読んでいる中年の男の人を見た。こんなことが、はなしのたねになる時代では悲しいではないか。」
 私も、まったく同感です。