図書館四方山話 その18

 冬休みに入りましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は26日まで、誰も来ない淋しい図書館で、山積みの仕事と格闘中です。午後の仕事に入る前に・・・四方山話を少し・・・。

 今朝の朝日新聞に、田中優子さん(法政大学総長・江戸文化研究者)の次のような言葉が載っていました。

「コロナの時代がきて、言葉の貧しさが極めて目立ってきています。オンライン上には映像や音楽など、言葉を埋める方法がどんどん出てきていますが、やはり核となるのは言葉です。これからは身体的な表現まで込めてしまえるような言葉の深化がないと、質の高い対話が成り立たなくなる。言葉を育てていく力がさらに必要になってくると考えています。」

 皆さんは、自分の意見や伝えたい気持ちをちゃんと言葉で言えますか?

 例えば、「ホッチキスありますか?」と時々尋ねられます。ここは学校ですし、司書はおせっかいなので、こう答えることが多いです。「貸出用のホッチキスはないけれど、私が仕事で使っているのはありますよ。でも一つしかないので、貸してしまうと仕事に差し支えるかもしれないから困るなぁ。あ、その手に持っているプリントをホッチキスで止めたいのかな?それなら、ここでポチっとするなら貸せるよ。」と、まあこんな感じ。

 それから、こんなこともよくあります。借りたい本を持ってカウンターに来て、「カード無いとだめですか?」と。ここは学校ですし、司書はおせっかいなので、こう答えることが多いです。「そうねぇ、貸出は施設利用カードで手続きすることになってますね~。無いっていうのは、家に忘れてきたってこと?それとも、失くしたの?」「あぁそうなの~忘れたのね~。宿題をするのにその本が必要なのね。今日借りたいわけね。生徒手帳持ってる?じゃあ今日は特別に生徒手帳で貸出するね。」と、まあこんな感じ。

 他に人がいない時は、「こんなふうに言うといいんだよ~。」とおせっかいにも言い方を教えたりしてしまいますが、言われる方は嫌なのでしょうか、どうなのでしょうか。

 先日、お弁当屋さんで私の前に並んでいた若いパパとママがいました。幼児が二人チョロチョロしています。ママが店員さんに、「スプーンありますか?」と尋ねました。店員さんは、「プリンやヨーグルト用のこんなスプーンならありますが。」と答え、無言でうなずくママの買ったお弁当にスプーンを入れてあげました。そして最後に「お弁当にはスプーンは付けないんですがね。」と一言。それを聞いたママは、舌打ちし、パパの袖をつかんで足を踏み鳴らしました。パパは無言でした。一部始終を見ていた私には、店員さんの気持ちがよくわかりました。サービス業としては、最後の一言は声に出してはいけなかったのかもしれませんが、ママがこんなふうに最初から言っていれば、店員さんの気持ちも違ったのではないでしょうか。「買ったお弁当をすぐに食べたいのですが、あいにく今日は幼児用のスプーンを忘れてきてしまいました。何かいただけるスプーンがありますか?」「あ、プリンに付けるスプーンがあるのですね?じゃあプリンも買います。」「え?いいんですか?いただいても。それは助かります。ありがとうございます。」こんなふうに会話が進んだのではないかなと思うのです。ママが言えなければパパがフォローすればよかったのにと、思ってしまいました。

 こんな大人を街で見かけると、私は生徒の皆さんの気になる点をスルーしてしまってはいけないなぁ・・・と思うのです。スルーするのが楽ですし、悪く思われないのですけれど、「おせっかいで嫌味な司書」、と思われても、ものの言い方を知らない大人になってもらっては困るし、横柄な態度が当たり前の大人になってほしくはありません。

 と、まあ、こんなところで、午後の仕事を開始します!