おすすめ!『老人と海』新訳!

 ノーベル文学賞を受賞した『老人と海』は、1952年、ヘミングウェイの生前最後に出版された名著です。新潮文庫では、1966年に福田恆存訳で刊行されました。(本校図書館にもあります)それ以来54年ぶりに、高見浩訳で新訳が出ました。早速入荷しました。新訳は・・・・・・

 まず見た目では、活字が大きくなり、行間も開いて、目にやさしくなっています。この点だけでも手に取りやすいかなと思います。

 これに限らず名作といわれる作品は、なかなか手に取ってもらえないのが残念なのですが、長年読み続けられているのにはやはりそれだけの力があります。皆さんが生まれた頃より何十年も昔に書かれた本ですが、現代を生きる皆さんの心をも動かす力を持っていると思います。今どきの本ももちろんいい本がたくさんありますが、たまには、時の洗礼を受けた本を読むことをおすすめします。

 『老人と海』は・・・・・・年老いた漁師が主人公。一人で小舟を操ってメキシコ湾流で漁をしていましたが、すでに84日間、一匹も捕れない日が続いていました。それでも、85は縁起のいい数字だと言い、次の日も海へと港を出ます。

 「いまはツキに見放されているだけだ。でも、わからんぞ。きょうこそは運の潮目も変わるかもしれん。毎日が新しい日だ。運が向けば言うことはない。」

 沖へ沖へと漕ぎだす老人。やがて大物の手応えが!・・・姿を見せたのは、これまでに見たこともない巨大なカジキです。海の上と下で長い駆け引きが続き、それはお互い生命をかけての死闘へと発展していきます。

 「人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない。叩きつぶされることはあっても、負けやせん。」

 はたして運は老人に味方したのか?・・・ぜひ読んでみてください。

 海での死闘が繰り広げられる場面では、老人の独白と客観的な情景描写が交互に現れ、そのつながりのなめらかさと、テンポの良さで、ぐんぐん引き込まれていきます。私は、ハラハラドキドキの一気読みでした。漁港の雰囲気や老人の小屋の様子などの臨場感あふれる描写にも心つかまれました。

 少年の存在感も大きいです。ここでは紹介しませんが、少年の存在があるのとないのとでは全く違ってきます。読んでみてください。

 旧訳と新訳、読み比べてみましたが、その批評は専門家におまかせするとして、私が皆さんにおすすめするのは新訳です。

 旧訳で読んだ大人の皆さんにもおすすめしたいですね。今、再読すると、この困難な時代にあたり、励まされる、というか、明日への活力をもらえるような気がします。

 『老人と海』の請求記号は、[933へ]、文庫本の書架ですが、今しばらくは、新着図書コーナーにあります。ぜひ、どうぞ。